ワークラボの日常

講演会『父親が語る 発達に課題のある子の子育て』に参加しました

こどもサポート教室『きらり』栗林南校さんが主催する標記イベントに参加してきました。

きらりさんは、相談支援をしているときにお世話になった事業所です。放課後等デイサービスで障害特性にあった学び方を身につけられるというコンセプトに驚いたものです。その延長で、ワークラボが就職のための取り組みを支援して、社会に送り出していくような連携が出来たらいいなと思っています。

さて、今回のイベントのプログラムは以下のとおりです。

プログラムⅠ『子育て体験談』

 ①「私はこうやって子どもの理解をしています」 オトムラシン 様

 ②「私はこうやって子どもを発達させました」  たにし 様

プログラムⅡ『父親ふたりの話の先にあるもの』

 高松大学 発達科学部 教授 山口 明乙香 先生

プログラムⅢ『高松の療育に新しい風を吹き込む』~逆SSTのご紹介~

 こどもサポート教室『きらり』栗林南校管理者/(一財)発達支援研究所 非常勤研究員 大内 雅登先生

オトムラシンさんからは、発達障害のこどもさんの日常を漫画で紹介されました。独特の行動をユニークな見方やネーミングで伝えていて、可笑しかったりなるほどと思わせてもらいました。大人や一般の人にはわかりにくい、お子さん自身の思いや行動の理由を感じられるものでした。視点を変えてユーモラスに受け止める工夫が素晴らしいと思いました。もちろん、本人のペースに合わせて寄り添うことを心掛けながらも、感情的になってしまうこともあるとお話されていて、一筋縄ではいかないところもうかがえる内容でした。

たにしさんは、お子さんが自閉症と分かった当時の不適切な振舞いを、さまざまな取り組みの中で解消された経験をお話されていました。今から見ると無駄だったり無意味だったりすることも紹介されていて、必死にいろいろなことに手を出していた様子がうかがえました。一般に、自閉症は想像力や社会性の障害として説明され、コミュニケーションや環境調整で対処するとされますが、たにしさんが効果を感じているのは、食事や運動、マッサージなどで身体を整えることで不快を解消して安定する方法ということでした。

山口先生からは、学問的にも少し広く発達障害理解のお話がありました。DSM-5(米精神医学会が発行する精神疾患の診断・統計マニュアル)では、発達障害は神経発達症という統合された形で理解されているということです。これは脳内の情報処理には多様性(ニューロダイバーシティ)があって、その不得意な面が現れていると考えられているそうです。(ちょっと難しいので、あらためて勉強が必要です)

お二人の発表については、それぞれから「あきらめる、あきらめない」というキーワードがあったので、この切り口からも解説がありました。あきらめずに取り組むことも大切だし、あきらめて別の方法を考えることも大事というところです。あきらめるというよりは、何ができるか、どこまでできるかを見極めて、常識にとらわれずに現時点で何に取組むかを組立て直すということだと思いました。

大内先生からは、逆SSTの紹介がありました。通常のSST(社会技能訓練)は、設定した場面について、ふさわしい振る舞いを話合って練習するものです。逆SSTは、これとは反対に、発達障害当事者があまりふさわしくない振舞いを取ってしまう理由を、質問と回答を通じて探っていくというもののようです。とても面白いと感じました。

とても勉強になりました。ありがとうございます。

山口先生の話の中で、脳はモヤモヤした状態だと負荷が高いので、結論を決めたがるということが触れられていました。そのために、情報を集めきらずに決め打ちで対策を立ててしまい、上手くいかないことがあるという文脈だったと思います。発達障害者の療育にもそのようなリスクがあるので、支援者はモヤモヤに耐えられる必要があるということでした。

これを聞きながら、障害者雇用する事業主のことを考えていました。私は、障害者が就職するときに一番大事なのは、自分の特性を把握して、会社にしっかり伝えることと考えてきました。なぜなら、会社が一番困るのは、本人の状態や支援方法が分からないことだと思うからです。体調不良で出勤できなかったり、作業できなかったりしても、それがどれだけ続くか、どう対処したらいいかわかれば会社も安心できるので、受け入れてもらう余地があると考えています。

今回のお話で、会社の人の脳負荷を低減するために、モヤモヤの残らない形で伝えられるようにする必要があったのだと気づきました。そのためには、支援者は本人の状態像や支援方法をモヤモヤした中で考え続け、整理がついたところで就職活動に向かうという流れが必要だということだったのだと発見しました。