ワークラボの日常

研修会「第3回逆SST体験」に参加しました

こどもサポート教室『きらり』栗林南校主催の研修会に参加しました。1月に参加した講演会『父親が語る 発達に課題のある子の子育て』で紹介されていて、おもしろそう!と思わず飛びついたものです。

通常のSST(社会技能訓練)は、特定の場面(例えば、「あいさつをする」とか「外出の許可をもらう」など)を設定して、適切な方法の意見を出し合い、ロールプレイをして学ぶものです。これに対して、今回体験した逆SSTは、発達障害当事者が一般的には不適切とされる振舞いをしてしまう場面を紹介し、参加者が質問をして、そのような行動をとった理由を探っていくというものでした。パズルや推理が好きな私には、たまらないですね。

今回挙げられたお題は、「仕事中に同僚の私物を借りて壊してしまった時に、補修はするが、報告はしない」という行動でした。ネタバレになってしまうとまずいので、私が立てた仮説と、それを確認するためにした質問をご紹介します。

仮説

他者の心の理解が不十分で、物を壊されたら怒ることをわかっていない?

「壊れていることに気づかないだろう」と考えている?

「自分の仕業とバレなければ大丈夫」と考えている?

「補修すれば全く元通り」と考えている?

「機能が維持されていれば、見た目が変わっても同じ価値」と考えている?

「デザインや思い入れは無価値」と考えている?

質問

           「自分のものを貸した時に、他の人が壊してしまったらどう感じますか?」

           「食品を買うときに賞味期限は確認しますか?」

           「同じものでも、デザインが気に入って高いほうを選ぶことはありますか?」

           「大切に持っている思い出の品はありますか?」

もちろん、他の参加者もいろいろな質問をしていました。それらを受けて、出題者も自分で考えていた理由が唯一ではなく、様々な思いが交錯していたことに気付いたとおっしゃっていました。

結局、私の立てた仮説たちは、要素の一部としてはあるかもしれないが、ど真ん中の回答ではなかったです。

参加してみて感じたのは、「難しい!」ということでした。答えを当てられなかったからだけではありません。もちろん、「そんな見方をしていたのか」と言いたくなるような、出題者の答えにも驚きました。でも、それよりも自分の想定とは離れたところにある答えを、発想やコミュニケーションスタイルが違っている相手から引き出すやり取りの難しさを感じました。持っている知識や常識の範囲で了解できる答えを用意して、理解したことにして先に進もうとする衝動と戦わなければならないのです。

体験前の説明で、理解できないと思うとわかろうとしないし、理解できたと思っても(誤解していても)わかろうとしないという問題が紹介されていましたが、まさにこの状態に簡単に陥ることを思い知らされた感覚でした。改めて、他者を理解するためには、もっと謙虚に(というか、相手が自ら説明できるように)聞いていかないといけないと思いました。

この体験会では、もうひとつ別の人のお題で、「職場で筆記具を使いたいときに、同僚のペンケースから無断で取り出して使う」行動も取り上げられました。私の仮説は、「自他の区別がつきにくい」「部下や女性は序列が低いからそのように扱ってもかまわないと思っている」「想像上で快諾されるから現実と混同してしまう」「無断で使われる不快感を理解できない」などと考えました。(改めて書き出すと、とてもネガティブな理由付けばかりだ・・・)

この問題も、正解とされたものは、「なるほど、(一般的にはそうではないが)そう考えることもできるな」と思うものでした。聞いてみることの大切さを改めて実感しました。そのうえで、多くの職場では受け入れられないだろうから、それぞれの職場で問題にならないように話し合ってルール化していく必要があると感じました。

とてもよい体験でした。ありがとうございました。